タイガー魔法瓶がサイホン式コーヒーメーカー 急増する上質派狙う

2023年02月07日

タイガー魔法瓶(大阪府門真市)は2023年1月25日、サイホン式のコーヒーメーカー「Siphonysta(サイフォニスタ)」を発表した。同社の熱制御技術やスチーム技術を生かしてサイホン式コーヒーの抽出を自動化し、これまで手順が難しいとされてきたサイホン式コーヒーを誰でも簡単に楽しめるのが特徴。抽出の様子を見て楽しめることや、インテリアになじむデザイン、手入れのしやすさにもこだわった。23年2月21日発売で想定価格は6万6000円(税込み)。

タイガー魔法瓶のサイホン式コーヒーメーカー「Siphonysta(サイフォニスタ)」
タイガー魔法瓶のサイホン式コーヒーメーカー「Siphonysta(サイフォニスタ)」
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 タイガー魔法瓶の「Siphonysta(サイフォニスタ)ADS-A020」(以下、サイフォニスタ)は、シンプルなデザインの台座に、透明で筒状のシリンダーが刺さった形をしている。シリンダーの下側にコーヒー粉を入れ、上側に水を入れて台座にセットし、味と濃さをそれぞれ3段階の中から選んでボタンを押すと抽出が始まる。

 始まって少しすると、水が温められてシリンダーの下側に蒸気として充満し、蒸らしが行われる。やがて上側からお湯が降りてきて浸漬(しんせき)と撹拌(かくはん)が行われ、それが終わるとコーヒーが噴水のように上側に吹き上がってきてたまる。あとはレバーをひねり、できあがったコーヒーをカップに注ぐだけだ。抽出にかかる時間はサイホン式としては短く、最短2分40秒でできる。

透明なシリンダーの下側にコーヒー粉、上側に水を入れてセットする
透明なシリンダーの下側にコーヒー粉、上側に水を入れてセットする
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水はすぐに温められて蒸気になり、下に降りて蒸らしが始まる。次にお湯が降りてきて浸漬が行われる
水はすぐに温められて蒸気になり、下に降りて蒸らしが始まる。次にお湯が降りてきて浸漬が行われる
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 できあがったコーヒーを飲んでみると、自分が普段ハンドドリップで作るコーヒーよりも香りが立っていて、味もすっきりとして飲みやすかった。蒸らすためにシリンダー内部が蒸気で曇ってきたり、コーヒーが噴水のようにシリンダー上側に吹き上がってきたりする様子は見ていて楽しい。味や香りだけでなく、目でも楽しめるコーヒーメーカーだ。

最後は、コーヒーが上側に勢いよく吹き上がってくる
最後は、コーヒーが上側に勢いよく吹き上がってくる
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複雑なサイホン式の工程を自動化

 サイホン式でのコーヒーは香りや風味に優れるが、抽出するために必要な道具や工程が多い、抽出方法が難しいなどの理由から、自宅で楽しむのは難しいとされてきた。サイフォニスタの特徴は、そうした複雑で難しい部分をすべて自動でできるようにしたことだ。

 そこにはタイガー魔法瓶が持つ熱制御技術やスチーム技術が使われている。電気ケトルのヒーターを応用して水をお湯やスチームに素早く変えて、コーヒー粉を短時間で蒸らす。サイホン式は撹拌で味が大きく変わるといわれるが、その撹拌工程もスチームで行っている。

ヒーターなどが入っている台座、水やコーヒー粉を入れるシリンダー、フィルターなどで構成されている。シリンダーのパーツは食器洗い乾燥機に対応している
ヒーターなどが入っている台座、水やコーヒー粉を入れるシリンダー、フィルターなどで構成されている。シリンダーのパーツは食器洗い乾燥機に対応している
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 作り出せる味は10通りある。お湯の温度と撹拌具合をそれぞれ3段階でコントロールして調整する9通りの味と、抽出の途中で温度を切り替えることで雑味を抑え、コーヒー豆が持つ本来の風味を引き出すという“Dual Temp”(2段階温度抽出)だ。

 操作は簡単だ。台座部分には3段階の風味選択キーと濃さ選択キー、DualTempキー、スタート・ストップキーがある。ユーザーはコーヒー粉と水をセットしたら味と濃さの組みあわせを選ぶか、DualTempを選んでスタートキーを押すだけだ。シリンダーは食器洗い乾燥機に対応していて、使用後の手入れもしやすくなっている。

温度をコントロールする「Acidic」から「Bitter」までの風味選択キーと、撹拌をコントロールする「Light」から「Strong」までの濃さ選択キーの組みあわせで9種類の味が出せる。その下にあるキーはDual Tempでつくるときに押す
温度をコントロールする「Acidic」から「Bitter」までの風味選択キーと、撹拌をコントロールする「Light」から「Strong」までの濃さ選択キーの組みあわせで9種類の味が出せる。その下にあるキーはDual Tempでつくるときに押す
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味と香りだけでなく、目でも楽しめる

 想定価格は6万6000円で、コーヒーメーカーとしては高価格帯の製品になる。ターゲットは、自宅でこだわりの豆を使い、こだわりの抽出でコーヒーを楽しみたい、本物志向のユーザーだ。

 タイガー魔法瓶 海外営業グループ統括マネージャー 兼 カフェマシンブランドマネージャーの土井直樹氏は、「SCAAカッピング基準(コーヒーの味を客観的に評価する基準のひとつ)で80点以上の、スペシャリティーコーヒーを楽しむ人が増えている。ニッチかもしれないが、そうしたこだわりを持つ愛好者に満足してもらえるマシンを目指した」と語る。

タイガー魔法瓶 海外営業グループ統括マネージャー 兼 カフェマシンブランドマネージャーの土井直樹氏
タイガー魔法瓶 海外営業グループ統括マネージャー 兼 カフェマシンブランドマネージャーの土井直樹氏
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 新型コロナウイルス禍でスペシャリティーコーヒーの輸入量は増え、自宅で飲む需要の増加に伴って、コーヒー豆販売の需要も増加している。いろんな種類のコーヒーを試したり、いつもより高いコーヒーを買ったりするようになった人が増え、価格だけでなく味や豆の種類を重視する人が増えているそうだ。

 しかし目指しているのは味だけではない。「目指すのはコーヒーによる新しい感動体験の提供だ。豆のポテンシャルを最大限に引き出す抽出技術を研さんしただけでなく、抽出工程までも楽しんでもらえる製品に仕上げた」(土井氏)という。

 例えば、一般的なサイホン式では上の漏斗にコーヒー粉を入れ、下のフラスコにお湯を入れる。できあがったコーヒーは最終的に下のフラスコにたまる。サイフォニスタはこの位置関係が上下逆になっていて上に水、下にコーヒー粉を入れ、できあがったコーヒーは上にたまる。この構造は、コーヒーが上に吹き上がる様子を見て楽しめるようにと開発当初から決めていたそうだ。

 販売では、実際に体験してもらう機会を増やすため、アンバサダープログラムを行う。ロースタリーやコーヒー店などに実機を購入してもらい、店舗を訪れた客に紹介してもらう。タイガー魔法瓶のEC(電子商取引)サイトにおける購入に結びつくと、店舗側に手数料が支払われる。

 米国と中国を中心に、海外展開にも力を入れる。世界のスペシャリティーコーヒーの市場は伸び続けており、26年には825.7億ドルになると予測されている。サイフォニスタは22年4月に米国でクラウドファンディングを実施し、開始から4日間で目標金額を達成。最終的には目標の271%に達した。販売目標は通年で5万台としており、その約半数は海外での販売を目指している。

 実機を体験してみて感じたのは、味や香りだけでなく、抽出過程を見るのも面白いということだ。すっきりとしたシンプルなデザインで、リビングに置いておきたいと考える人もいるだろう。サイホン式の抽出過程を自動化したコーヒーメーカーは珍しく、コーヒー好きに注目されそうだ。

(写真/湯浅英夫)

Content retrieved from: https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/watch/00013/02144/.

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