2021.12.10 「2800万円のコーヒー豆、落札した茨城のカフェの戦略…コロナ禍でも堅調なワケ」

「思いつき」を軌道に乗せていけるか
 同社の歴史と向き合うと、会長も社長もひらめき型で、ときに「思いつき」のような無鉄砲な行動をするのも特徴だ。それをなんとか軌道に乗せる従業員の努力が見逃せない。

 前述したコロンビアの農園では、栽培中のコーヒー原料となる樹木がこれまでに3回、サビ病などで全滅。近年、ようやく安定収穫できるようになった。

 また、現在の大洗店は、もともと別のコーヒーチェーンが入居していたが、東日本大震災の津波被害を受けて撤退。本店も被災したサザコーヒーが地元の懇願を受けて出店。店を運営するとともにバリスタ育成を強化し、国内有数のバリスタが育った。

 今年秋に稼働した、ひたちなか市の新工場には、ドイツ製プロバットなど最新鋭のコーヒー焙煎機を導入。世界各地から仕入れた良質なコーヒー豆を、各豆の持ち味を生かしながら焙煎できる。今後は大手スーパーへの供給にも力を入れ、注文の電子化も進める。

 ある社員は、こう話す。

「社長は、ときに突拍子もない行動をとり、ついていくのが大変ですが、『世界一価値あるコーヒー屋』をめざす信念とロマンがあります。その実現に向けて一緒に進んでいきたい」

 コロナ禍で飲食業は大打撃を受けたが、混迷時代は見方を変えればチャンスでもある。国内最大手のスターバックスは年間約100店の新店を開業し、存在感をますます高める。

 店舗数はスタバの100分の1にすぎない茨城のカフェだが、意外性のある活動で巨象の前足にかみつくような戦略をとる。今後どうなるか。そのひらめきと実行力を注視したい。

(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)

高井 尚之(たかい・なおゆき/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)

1962年生まれ。(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

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