生成AIの進歩と普及により、あらゆることが劇的に変化しつつある現代社会。ついに中国では死者を復活させるフェーズにまで突入したようです。今回のメルマガ『施術家・吉田正幸の「ストレス・スルー術」』では著者の吉田さんが、中国で話題となっているAIを使用した「死者復活動画ビジネス」の実態を紹介。その是非と今後必要となってくるであろう「対策」を考察しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題AIで死者を復活させた動画に関して
AIで死者を復活させた動画に関して
近年、技術の世界では、目まぐるしい速度での進化が見られ、中でも「生成AI」への注目が集まっている。生成AIは従来の方法とは一線を画し、イノベーションを全く新しいレベルへと押し上げる可能性を秘めていることは確実だ。
生成AIがイノベーションをどのように促進するのか?様々な活用法やビジネスへの影響、そして組織や個人が直面する問題は多岐に渡っていくのだろう。
そんな昨今、Yahoo!ニュースで相当なコメントを集めている記事が飛び込んできた。それは「『パパ、ママ、会いに来たよ』AIで死者を“復活” 中国で新ビジネスが論争に 『冒とく』か『心の救済』か」というタイトル。トップにYouTube動画があった。
● 「パパ、ママ、会いに来たよ」AIで死者を“復活” 中国で新ビジネスが論争に 「冒とく」か「心の救済」か
世界では今、インプットされたデータから文章や画像などを自動で作り出す「生成AI」の技術が急速に進化している。そして、中国では「生成AI」を使って亡くなった人を「復活」させるビジネスが登場し、論争を呼んでいるという。
「パパ、ママ、会いに来たよ」から始まる先ほどの生成AIで「復活」した死者たちのリンク動画を観ていて技術の進歩が倫理や宗教と直面する姿を垣間見た。
自分はすでに両親は他界している。もしも、動画で復活したらと思うとゾッとする。なんでだろう?それは自分の中で“完結”しているからだ。
特に母親はすこしずつ老化しゆっくりと自分も家族に対しても心の準備を与えてくれて、86歳で他界した。通夜も葬式も一般的日本人の葬式のルーティン通りに事が進み、時間が経過して母との別れが終わった。
それが、1~2週間で生成AI動画が作成されたら、ええ!?という感じで、やっぱり無理がある。「ちゃんと綺麗な顔で亡くなってくれたじゃんか!何を今さら」みたいな感じだろう。
それにしても、いったいどのようにそんな動画を作るのだろうか?Yahoo!ニュース動画によると、生前の写真や音声を元に、AIが動画を作成するという。専門的なことはわからないが、素材があればなんでもござれなんだろうな。
「僕はとっても会いたかったよ。元気なの?」なんて、まるで本人がしゃべっているかのような動画ができあがる。AIが学習することで、本人そっくりの口調で会話ができるらしい。やっぱり、ゾッとする。
その動画には、事故で亡くなった叔父を「復活」させ、祖母と毎日、会話ができるようにした男性が出てくる。「ニーズを満足させてくれるサービスだと思います」と制作者は話す。
それが、張沢偉さん(33)だ。去年、生成AIで死者を復活させるビジネスを始め、これまでにおよそ1,000人の「死者を復活」させてきたというのだ。
始めたきっかけは、友達から「お父さんを復活させてほしい」と依頼されたことで、次のように本人は語っていた。
「(AIで『復活』した父を見た)友達はとても感情的になり、涙を流しました。自分たちのやっていることは、人助けになるとわかったんです」
確かに復活を望んでいる人にとってはとても有難いサービスなのかもしれない。あなたはどうだろう?その制作者の張さん自身を再現した動画のあとに説明が入った。
その復活AIは、およそ1週間で完成し、費用は4,000元(約8万円)からだという。事故で亡くなった子どもに、もう一度会いたい。古い写真からおじいさんを復活させてほしい。そんな願いが日々、張さんのもとには寄せられているという。
儲かりそうだ。
ただ一方で、こんな問題も指摘されている。
2020年に事故で亡くなったアメリカのプロバスケットボール選手、コービー・ブライアントさんのAI動画。なぜか流ちょうな中国語をしゃべっていた。
このように、亡くなった有名人を生成AIで勝手に復活させてしまうケースが相次いでいるというのだから問題も起こるだろう。「死者への冒とく」「肖像権の侵害」といった批判があがっているらしい。
先ほどの張さんは、悪用されないよう本人や家族の同意をとっているとしたうえで、生成AIの可能性について次のように話していた。
「私は今、人々を救っていると感じます。人々に精神的な安らぎをもたらしているのです。私の夢は、普通の人がデジタルの力で『永遠に死なない』ことを実現することです」
急速に進むAI技術がもたらすのは心の救済か、それとも死者への冒とくか。重い問いを投げかけています…とニュース記事は終わった。
古代エジプトでは、誰もが死後の世界を信じていた。その世界は、死んだ者の社会的地位によって異なるが、誰もが死後の世界に必要な道具を用意していた。そして、ミイラと共に副葬品も埋葬される。
どちらかというと未来の世界という他界へ行っても生きられるように施されたのがミイラだと感じる。
人の死後について、世界に宗教は無数あるが、大きく分けて他界派と転生派に分けられるのだ。
他界派はキリスト教、イスラム教が代表だが、神道では「根の国」「黄泉の国」といった他界を説き、輪廻転生を説く仏教にも浄土教などひとまずは他界派に属するとしてよい宗派がある。
一方で転生派は原始仏教や禅宗、ヒンドゥー教などのインド思想。また神智学、前世療法など近代のスピリチュアリズムは東洋思想への傾倒から転生思想を採用しているものが多いらしい。
もちろん我々は死んだことがない以上、死後のことは知る由もない。寧ろ現実社会にこうした宗教観が人生観、人生そのものにどのような影響を与えるかについて考えるしかないだろう。
そして、宗教と倫理観に則って、各家族が生前にしなければならないことが増えていくのだ。
AIの進化によって、臓器移植同様に本人の死後にAI復活動画を作っても良いという許可と家族の同意が必要になりそうだ。
――(メルマガ『施術家・吉田正幸の「ストレス・スルー術」』2024年4月20日号より一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録下さい)
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