缶コーヒー25円値上げ、自販機価格に注目 続く神経戦値上げラッシュ2023年2月13日 2:00 [有料会員限定]

2023年2月13日 2:00 [有料会員限定]

清涼飲料メーカーが、長らく控えてきた缶コーヒーの値上げを相次いで打ち出した。なかでもサントリー食品インターナショナル(サントリーBF)とアサヒ飲料は25年ぶりで、値上げ幅も25円と大きい。コスト増が長期化し、収益性の高い缶コーヒーの値上げに踏み切ったが、その裏には自販機とスーパーなど量販店との価格差に悩むメーカーの苦悩がある。

 

「ボス」は希望小売価格が140円に上がるが自販機での価格は未定だ

 

1998年以来の値上げ

「こんなに高くなったら、自分だって買わない」。ある飲料メーカーの関係者は自嘲気味に話す。

サントリーBFとアサヒ飲料は缶コーヒーの中心サイズである185㌘のショート缶商品を、5月から値上げすると発表した。希望小売価格を引き上げるのは1998年以来、25年ぶり。値上げ幅は25円で、「ボス」や「ワンダ」のショート缶は140円になる。実に21%の値上げだ。

販売価格の引き上げは、これまでも消費増税や原材料高を理由として数回あったが、引き上げ幅は10円どまり。25円は業界にとって異次元だ。

今回の値上げをそのまま反映すれば、消費税を上乗せした自販機での販売価格は150〜160円になるはずだが、実際にはそこまで値上がりはしないと見る向きが多い。

すでにアサヒ飲料は直販の自販機では10円の値上げにとどめると発表した。サントリーBFも「販売価格は検討中」とするが、同様に自販機では価格を抑える公算だ。

なぜか。異次元の値上げの狙いは収益改善だけでなく、スーパーと自動販売機チャネルの価格差の是正にあるからだ。

スーパーと自販機、数十円の値差

日経POSによると、直近2年間のスーパーなどでの平均価格はコカ・コーラボトラーズジャパン(CCBJI)の「ジョージアエメラルドマウンテン」が66・1円、サントリーの「ボス 贅沢微糖」が62・6円、アサヒの「ワンダ 金の微糖」が57・6円。希望小売価格の半値に近い。

 
 

「この業界は希望小売価格などあってないようなもの」と業界関係者が語るように、自販機オペレーターが運営する自販機でも、希望小売価格より低い価格での販売が常態化している。それでも量販店との価格差は数十円に上り、飲料総研(東京・新宿)の宮下和浩氏は「この価格差を放置したまま値上げに踏み切れば、消費者の自販機離れが進むのは必至だ」と話す。

缶コーヒーは大半が自販機で販売され、小容量ながら単価が高くメーカーにとって最大の収益源でもある。「収益改善のために値上げするのに、自販機離れが進めば逆に収益を悪化させてしまう恐れがある」(宮下氏)。メーカーが直販自販機での価格を抑える背景にはこうしたジレンマがある。

一方で、CCBJIは小売店向けも自販機と同様に10円の値上げにとどめた。他社商品に比べスーパーでの値引き幅が小さく、他のメーカーに比べれば高単価で販売されているためだ。

ただ、CCBJIの親会社のコカ・コーラボトラーズジャパンホールディングスは10日の決算説明会で、「さらなる価格改定を真剣に検討する」と追加値上げの可能性も示唆した。

1月にはカップ式自販機オペレーター最大手のアペックスが地域経済活性化支援機構(REVIC)から再生支援を受けることを発表するなど、自販機を巡る事業環境は厳しさを増している。自販機と量販店の販売価格のバランスをどう取るか。メーカーの神経戦は続く。

(逸見純也)

Content retrieved from: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC09D9S0Z00C23A2000000/.

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