2023/01/18 18:15
© 毎日新聞 提供 コーヒーの実の出来を点検する青木さん=白浜町日置で2023年1月17日午後0時17分、竹内之浩撮影
国産の香り、味わいを白浜から――。国内では珍しいコーヒー栽培に、和歌山県白浜町の農業法人「アドバンス4(フォー)カンパニー」が取り組んでいる。「南紀白浜コーヒー」で、2月の兵庫県の百貨店でのイベントを皮切りに、3月から本格的に販売を開始する予定だ。青木孝尚社長(58)は「新しい特産品に育てたい」と意気込んでいる。
和歌山県田辺市の建設会社社長だった青木さんが2020年7月、長男に社長を譲ったのを機に法人を設立した。栽培に適した標高約130メートルにある同町日置の果樹休耕地約5000平方メートルを購入し、ハウス4棟を建てた。「南紀白浜ファーム」と名付けた農場では、計約1300平方メートルのハウスに、世界で生産量が最も多い「アラビカ種」の原種に近いとされる「ティピカ種」の木313本を栽培している。
青木さんは、以前から町内の農業後継者の不足や休耕地の増加を危惧していた。若い世代に就農してもらおうと、興味を引きそうなコーヒー栽培を計画した。世界で流通するコーヒー豆の多くはアフリカや中南米などで生産される。寒さや霜に弱く、国産品は希少だ。そこで耐寒性と成長速度を高める処理を施した苗木を岡山市の農業法人から仕入れ、ハウスの温度管理に注意を払いながら育てている。
21年末に初めて真っ赤な実が収穫でき、22年10月から迎えた2度目の収穫では来月までに250キロを見込む。だが、無農薬で栽培しているため、カイガラムシなどによる虫害が悩みの種。「今回は約4割がやられた」と青木さんは嘆く。それでも試飲した人からは「香りがいい」「雑味が少なく爽やか」などの好評を得たという。
また、コーヒー豆は実の中の種に当たり、残った皮や果肉、葉にもポリフェノールやトリゴネリンといった体に良いとされる成分が含まれているため、乾燥して茶葉として販売する。
まずは2月15~21日、兵庫県川西市の百貨店「川西阪急」で販売される予定で、青木さんは「多くの人に『南紀白浜コーヒー』を知ってもらいたい」と期待する。3月からは農場で直売し、近く開設するホームページでのネット販売も始め、コーヒーの生豆100グラムを6000円で予定している。同時に施設見学や収穫・焙煎(ばいせん)などを体験しながら、コーヒーを味わってもらう観光農園も始める。
国産コーヒーの希少さから、ホテルやコーヒー豆販売店などから引き合いがあるというが、生産が追いつかず、農園の拡大が今後の課題だ。新たな用地約2000平方メートルを購入済みで、青木さんは「休耕地の活用を更に進め、地域活性化の一端を担いたい。農園と他施設や産物が連携し、過疎高齢化が進む日置川地域に人が来てもらえるようになれば」と語る。問い合わせはアドバンス4カンパニー(090・3250・4192)。【竹内之浩】
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