コーヒー栽培、山陰でできた 苦節6年…葉の活用めざす 鳥取県境港市・澤井珈琲

2023年1月18日

コーヒー栽培、山陰でできた 苦節6年…葉の活用めざす 鳥取県境港市・澤井珈琲

 冬場は氷点下まで冷え込むなど気候的に不可能とされる山陰地方で、コーヒーの栽培が実現した。手がけるのは、鳥取県境港市に拠点を置き、コーヒー豆の販売や卸売業を営む澤井珈琲だ。国産の独自商品開発による農業活性化に加えて、栽培を見学できる施設の開設、機能性を生かした新商品の開発など、コーヒーによる地域振興につなげたい考えだ。(西野大暉)

同社は1982年創業。山陰地方を中心に東京・銀座など全国10店舗で100種類以上のコーヒー豆やインスタントコーヒーなどを販売する。

熱帯作物のコーヒーは、国内では沖縄県の石垣島や東京都の小笠原諸島などで小規模に栽培される。ほぼ輸入品しかないコーヒーの自社栽培を着想したきっかけは、葉に豊富で、血管機能の改善や認知症予防に役立つとされる「トリゴネリン」を活用したいと考えたことだった。

冬場は氷点下に

2017年、無農薬で成木作りから着手。国内の商社からアラビカ種やゲイシャ種の種子約2万3000個を仕入れた。本社近くのビニールハウス4棟約1アールで育て始めた。

ただ日本海沿岸で冬場の最低気温が氷点下になる日も多い。周囲から「山陰でコーヒー栽培は不可能だ」との声も聞かれた。国内での栽培事例も少なく、当初は、温度管理や病害虫対策など分からないことだらけだった。

栽培2年目の夏にはハウス内の温度が40度以上に上昇。12カ月齢の成木2万3000本のうち、3000本が水分不足で枯れてしまった。湿度が高くなる梅雨には、カイガラムシが多発して手作業で取り除いた。

温度管理に注力

澤井由美子相談役らは独自に栽培方法を研究。毎日、朝夕に生育状態を観察した。とりわけ温度管理には気を配った。苦労の末、6年かけて地域の気候に合った栽培方法を見出した。澤井相談役は「最初の1、2年、試行錯誤を重ねたことでコーヒーについて理解できるようになった」と振り返る。

昨年3月、果実約5キロを初収穫した。種子は成木作りに利用する他、自社イベントなどで焙煎(ばいせん)したコーヒーを提供する予定だ。今後は収穫量を確保し、甘さを引き出す製法などを確立して商品化を探る。

当初、自社栽培のきっかけとなった「トリゴネリン」を生かした“コーヒー茶”の新商品も完成。コーヒーの新たな魅力を引き出すことも目指している。

澤井相談役は「積雪がある山陰地方でもコーヒー栽培が実現できた。規模を拡大して鳥取県の名産品に育てたい」と意気込む。

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