丹精を込めて育てたコーヒーノキの苗を生産者代表(左側)に引き渡す徳之島高2年生たち=8日、伊仙町(AGF農場)
初の植え付け作業サポートも
高校生ら 育苗・植え付け支援
AGF実証農場・平張りハウス 伊仙町
【徳之島】官民連携「徳之島コーヒー生産支援プロジェクト(PJ)」による産地化推進に、コーヒーノキの育苗・供給で側面協力を続ける県立徳之島高校。生徒たちがこの1年間丹精を込めて育苗協力した約460本の地元生産者組織への引き渡しと合同植え付け作業が8日、伊仙町面縄にある「AGF実証農場」平張りハウスであった。生徒たちは植え付け作業も初体験し、ふるさとの新たな産業への定着に期待を寄せた。
徳之島コーヒー生産支援PJは、伊仙町当局や国内コーヒー飲料大手の味の素AGF㈱(本社東京都)・丸紅㈱(同)・徳之島コーヒー生産者会(32人)の4者連携(2017年6月調印)で推進しているもの。AGFは、国産「徳之島コーヒー」のブランド産地化を目指して防風対策や土壌改善、収穫豆の精選機や焙煎(ばいせん)機不足面などで生産者会を支援。昨年は、防風対策で初の「平張りハウス」も導入。島の次世代に引き継ぐ新産業の創出―に位置付けている。
「徳之島コーヒー」産地化への適性普及品種の選抜は総合商社丸紅㈱が担当。コーヒーベルト〝北限〟の台風常襲地域にあって、防風対策は最大の課題であるため、世界中から同島に合った適性品種を模索。播(は)種用の供給を続けている。
そして同島現地サイドでの播種・育苗は、徳之島高校総合学科生物生産系列の2年生たちの授業(伊仙農場実習)の一環で19年度から協力を開始。23年度のこの1年は、樹高が低く生豆が大きく、収量がやや多く、初収穫まで約3年、密集栽培にも適している―という「パライネマ種」(ティモールハイブリット種×ビジャサルチ種系統)の育苗に取り組んできた。学校側によると低温湿潤処理の発芽率が約70%と良好だった。
「徳之島コーヒー」苗引き渡し・植え付け作業には、町当局や同校同系列2年生11人や引率教職員、生産者会員、AGF本社社員など関係者約60人が参加。同品目の防風対策としては同島初となる平張りハウス(AGF設置、約1050平方㍍)内に手分けして丁寧に定植した。
生徒の一人・郷(さと)健太さん(16)は「たくさんのコーヒーの実がなってこの島の新たな産業に貢献してほしい。(着果見込みの3年後は)自分たちで育てたこのコーヒーを味わってみたい」とにっこり。生産者会の泉延吉副会長(76)は「生豆で現在キロあたり1万円(AGF)。一粒一粒の収穫には人手が要るがサトウキビやバレイショの数倍の単位所得に。若い人たちに興味を持ってほしい」とも。
AGF生産統轄部環境ASVグループ長代理の臼井孝允さん(42)によると、同PJ推進7年目の今年9月下旬~上旬頃には同社「徳之島コーヒー」新商品をリリース予定で、まずは島内の農産物直売所や空港売店などで発売するという。