西暦3000年。私の孫の孫の孫の孫の…。
AIをめぐる誇大広告が世の中にあふれる今、ついにコカ・コーラもその流れに乗ることになりました。
いわずとしれた老舗飲料メーカーが、看板ドリンクの新フレーバー開発のアドバイザーとして、AIを採用したのです。
ならば米Gizmodoとしては、そのお味を試してみるしかありません。そしてその結果は…実に意外だったのです。
西暦3000年のコーラ、そのお味は…
「口もとにパンチが来るだろう」と目を閉じて準備していたら、鼻をパシッとやられた…という経験はありませんか? コカ・コーラの“Y3000”(意味は西暦3000年)フレーバーを飲んだとき、まさにそんな気分でした。
キャッチフレーズは「未来の味」。さぞかし未来的な大胆な味がするのだろう…と期待は高まりますよね。
でも、それは大ハズレ。最初の一口を口に含んでも、コーラならではのスパーク感はまったくなし。液体が口の奥にスルスルと入っていき、舌の上でほのかにしびれるものの、なんとも言えない退屈な舌触りが続きます。
やがて風味は消え、ベリーと砂糖のぼんやりとした後味が残ることに…。
ああ、AIってなんて素晴らしいのでしょう。未来の味がするはずのY3000なのに斬新さは未来のカケラも感じられず、「なんか昔からあるよね、こういう味」という感じ。
フレーバーが無限に広がるオレオとは違い、「どんな味か食べてみたい」という欲求すら沸いてこない、バズるワードではあるけど、行列ができるほどではないというか。
ここで、共同著者2人の率直な感想をお伝えします:
実際に飲んでみた2人の感想:「コカ・コーラのY3000はやばい!」
ケビン・ハーラー:
私はこの6年間、水と、たまにソフトドリンクは飲んでいましたが、炭酸飲料はそもそもあまり得意ではありません。なので、Y3000をはじめて口に入れたとき、「私の味覚が未熟なのか?」と思いました。でも、この記事を一緒に書いているカイル・バーが私と同じ疑問を抱いてくれたので、このギミック感満載の飲み物は「口の中でスパークせずに消えていった」という結論に達しました。まあ、一言でいうと、味気ないのです。
一口目はまあまあ冷たかったのですが、ソーホーからマンハッタンのミッドタウンへの通勤中に少しぬるくなりました。なので、次に飲むときは当然、氷を入れていただきました。ちゃんと冷やして飲んだらどうなったと思いますか? まさかの、さらに味がなくなったのです。このドリンク1本に1.99ドル+税を支払ったわけで、無駄だったとは思いませんが、Y3000は「広告に偽りアリ」といった感じでしたね。
カイル・バー:
正直、それほど期待していなかったのですが、さすがはコカ・コーラさん、まさかこれほどとは…。AIはレシピを考えるのは苦手です。カクテルや命にかかわらない程度の節約レシピなどなど、すでに実証済みです。それはわかっていました。
OpenAIのChatGPTやGoogleのBardといったチャットボットは、レシピは考えてくれますが、できあがる料理については何も考えていません。彼らは単に、それぞれの食材が過去にどんなものと組み合わせてどんな調理法で「料理」になっていったか、を知っているだけ。なんとなくうまくいきそうな組み合わせを提案しているだけなのです。
Y3000はAIと共同開発されたものだそうですから、おそらくAIが作ったレシピは「ちゃんと飲めるもの」になるように、大きく修正されたのではないでしょうか。
そうした企業努力、面白おかしいブランディング、デジタル化されたロゴデザインを踏まえてうえで言わせてください、やっぱりおいしくない。Y3000はまずい。飲んではいけない…。
AIが作ったコーラでAR体験もできる
コカ・コーラは斬新なフレーバーの炭酸を世に送り出しただけではありません。Y3000を購入すれば、楽しいAR(拡張現実)体験も味わえます。
コーラのボトルについているQRコードをスキャンすると、撮影した画像を使って西暦3000年を覗き見できるWebアプリが起動します。
たとえばニューヨークの街並みの写真はユートピアのような都市になったり、オフィスのデスクの写真はカラフルなインテリア風になったり、と。仕上がりは、性能イマイチのAI画像ジェネレーターで作ったような、いかにも人工的な光沢のある画像になりますが、未来っぽい超現実を感じることはできます。
Photo: Gizmodo USコカ・コーラは9月12日のプレスリリースでこちらのフレーバーを発表し、グローバル戦略担当シニア・ディレクターのオアナ・ヴラド氏は「未来から来たコーラはどんな味なのかというコンセプトを探求したい」とコメントしています。
「味がしない」のが未来のコーラの姿なら、ただのお水のオーガニックさにこだわるのもアリかも!