環境省とキーコーヒー、エチオピア小規模コーヒー生産者を支援、気候変動への対応策として現地で技術指導も

環境省とキーコーヒーは、エチオピアの小規模コーヒー生産者を支援するプロジェクトを進めている。その成果について12月4日、「令和6年度気候変動に脆弱な小規模コーヒー生産者の明るい未来提案業務」に関する報告会がキーコーヒー本社で開催され、現地の気候変動への対応策やプロジェクトの進捗が発表された。

エチオピアはアラビカ種コーヒーの原産地であり、世界市場に高品質なコーヒーを供給している。しかし、世界のコーヒー産業では、気候変動による降雨パターンの変化や高温化が収量や品質に深刻な影響を及ぼすことから、2050年にはアラビカ種の栽培適地が半減する可能性が指摘されており、大きな課題になっている。

環境省地球環境局の小川眞佐子特別交渉官は、次のように語った。「気候変動の影響によるコーヒー生産地の縮小は、品質の低下や価格高騰を招き、日本の市民生活や産業にも影響を及ぼす。エチオピアの小規模コーヒー生産者の持続可能な生産を支援することは重要だ」。

特に、日本国内のコーヒー需要の高まりも背景にあり、産業構造全体での問題意識が必要とした。

キーコーヒーの柴田裕社長は、「現地の生産者と協力し、気候変動をチャンスに変える取り組みを進めてきた。木製ハンドパルパー(果肉を除去する機械)を活用した精選技術や混植栽培の提案を通じ、生産者の課題解決に貢献していく」と語った。

報告会後に披露されたエチオピアコーヒーセレモニー

キーコーヒーの社員たちはエチオピア現地を訪問し、生産者や研究機関との協力に精力的に取り組んできた。営農セミナーでは、気候変動の影響を緩和するための具体的な技術指導を行い、コーヒーの新植の推奨や精選方法の改善を提案。特に、木製ハンドパルパーを用いた精選技術は、現地の限られたリソースでも実施可能であるため、大きな注目を集めたという。

また、同社社員たちは、バナナやマメ科植物を混植する方法を提案し、水分の保持や土壌の改良につながる具体例を示した。これにより、農家の収量と品質を向上させるだけでなく、環境保全にも寄与する可能性がある。こうした技術は、ジマ農業研究センターの協力を得て、さらに拡張される予定だ。

社員たちはさらに、現地の農業研究所やウォッシングステーション(コーヒー精選所)を訪れ、農家の直面する課題を直接ヒアリングした。それにより、気候変動による高温や降雨パターンの変化を受けて栽培面、品質面で様々な影響があることが分かったという。

まず、南西部のジマ地区では降雨パターンの変化が起こり、乾季にも雨が降って本来の開花期ではない時期に花が咲いてしまうことで収穫時期が大幅にずれ、今年は例年10月のところ7月から収穫が始まった。収穫時期がずれて販売場所が見つからないという問題も起きたという。その他、ウォッシングステーションにおいて高温の日が増え、乾燥時に豆の表面が急激に乾燥してヒビが入り品質が下がったという。

今回、来日したエチオピア農業研究所クロップ・ダイレクターのフカドゥ・グルム氏は、日本の研究機関やコーヒー工場や小売店などを視察し、次のように話した。

「気候変動がエチオピアのコーヒー生産に与える影響を改めて実感している。日本の研究機関で得た知識を活用し、エチオピアの持続可能なコーヒー生産に寄与していきたい」。

また、ジマ農業研究センターのセンター長であるレミ・ベクシサ氏は、「新しい栽培技術が現地の生産者にとって大きな助けになる」と話した。

駐日エチオピア大使のダバ・デブレ・フンデ氏は、「エチオピアのコーヒー産業が気候変動に直面している中で、本プロジェクトは非常に意義深い。小規模コーヒー生産者を支援することは、コーヒーの将来的な供給と持続可能性を確保するために重要だ」と述べた。さらに、エチオピアの農業技術向上に向けた今回の取り組みは、日本との関係深化にもつながると話した。

キーコーヒーは、約50年前からインドネシアのトラジャ地域で、小規模生産者と共に歩んでおり、今回のエチオピアでは、その経験・知見を活かした。この取り組みを他地域にも展開し、今後も気候変動に対応する持続可能なコーヒー生産の実現を目指している。

また、キーコーヒーの社員たちは現地での経験をもとに、さらなる技術開発や農家との連携を深める重要性を語っている。プロジェクトを通じて得られた知見は、日本国内の消費者にも還元される可能性があり、持続可能なコーヒー文化の発展にもつながることが期待される。

コーヒーという身近な飲み物を通じ、気候変動というグローバルな課題に挑む同プロジェクト。日本の生活者がおいしいコーヒーを飲み続けられるためにも重要な取り組みとなっている。

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