サステナビリティやSDGs、エシカル消費……環境問題への意識が高まるにつれ、私たちの日常に溢れるようになった言葉たち。企業もこぞって環境配慮をアピールするようになったが、その裏では、ある矛盾した現象が起きている。
環境活動に取り組んでいるにも関わらず、それを公にしない「greenhushing(グリーンハッシング)」。一体なぜ、企業は環境配慮を隠そうとするのだろうか。
企業を怯えさせる
「グリーンウォッシング」の影
「Down To Earth」によれば、グリーンハッシングとは、企業が自社の環境目標や達成状況に関する情報を過少に報告したり、戦略的に隠蔽したりする行為を指す。環境活動に対する逆風とも取れるこの現象は、企業の抱える複雑な事情を浮き彫りにする。
企業がグリーンハッシングに走る理由のひとつとして「グリーンウォッシング」への懸念の高まりが指摘されている。グリーンウォッシングとは、実際よりも環境に配慮しているように見せかける行為のこと。近年、消費者の環境意識の高まりに便乗したグリーンウォッシングが問題視されており、企業はそうした批判の矢面に立たされることを恐れグリーンハッシングへと傾いているようだ。
実際に、スイスの気候変動コンサルタント会社「South Pole」の調査によると、企業の58%が規制や監視の強化を理由に、気候変動に関するコミュニケーションを意図的に減らしているという。環境規制の強化や情報開示の圧力が高まるなか、企業は過剰な主張が招くリスクを回避しようとしているのかもしれない。
「本当に良いもの」は語らない
消費者の意識と企業のジレンマ
皮肉なことに、消費者の「グリーン」に対するイメージ自体も、グリーンハッシングを助長している可能性がある。環境に配慮した製品は、従来の製品よりも品質が劣るか、価格が高いというイメージを持つ消費者は少なくない。つまり、環境活動を声高にアピールすることが、必ずしも消費者の心を掴むとは限らないのだ。
たとえば、フェアトレードのコーヒー豆は、通常のコーヒー豆よりも価格が高く設定されていることが多い。これは生産者に正当な賃金を支払い、労働環境を改善するためのコストが上乗せされているため。しかし、価格に敏感な消費者にとってはその価値を理解しきれず「環境に配慮しているから高い」というネガティブなイメージを抱いてしまう可能性もある。
このように、企業は「環境配慮」と「消費者心理」の狭間で、難しい舵取りを迫られている。環境活動を積極的にアピールすることでグリーンウォッシングの疑いをかけられるリスクと、環境活動を控えめに伝えることで消費者の購買意欲を低下させてしまうリスク。企業はこのジレンマにどのように向き合っていくべきなのだろうか。
「透明性」と「対話」が未来を拓くカギに
グリーンハッシングは、環境問題に対する意識の高まりと企業の対応の遅れが生み出した、現代社会特有の歪みと言えるだろう。環境問題解決のためには、企業と消費者、双方の意識改革が必要不可欠だ。
企業は、透明性の高い情報開示を通じて、環境活動に対する理解と共感を広げていく必要がある。環境報告書の作成やWEBサイトでの情報発信はもちろんのこと、SNSなどを活用した積極的な情報発信も有効だろう。いっぽう消費者は、企業の環境活動に関心をもち、その情報を批判的に吟味する姿勢が求められる。企業のWEBサイトやSNSをチェックしたり、環境NGOの活動に参加したりするなかで、企業の姿勢を見極めていくことが重要になる。
企業と消費者が積極的に対話し、互いの意識を高め合うこと。それが、持続可能な社会の実現へとつながる一歩となるはずだ。
👀GenZ's Eye👀
過剰にアピールしていると思われないくらい、当たり前に取り組むことができれば、グリーンウォッシングはなくなるだろう。単にアピールするのではなく、偽りのない情報を企業が届けていく姿勢を、消費者は正しく理解する必要があると思う。