【本作を第1回から読む】子どもの虐待死。もっとも多い年齢が「0歳0か月0日」【不都合な数字】
数字を使って社会を見ると、意外なことがわかるかも!? 統計をしっかり見ると、じつは自分が思っていたことや当たり前だと感じていたことが、実体とは違っていることもあります。数字はふだん見逃している、さまざまな側面を発見するヒントになるのです。そんな数字とイラストを使って、さまざまな事象を解説する『大人も子どもも知らない不都合な数字』(フォレスト出版)にて、数字の背景を考えながら社会問題に向き合っていきましょう。
※本記事はチャリツモ著の書籍『大人も子どもも知らない不都合な数字』(フォレスト出版)から一部抜粋・編集しました。
※写真はイメージです(画像提供:ピクスタ)
日本のプラスチックのリサイクル率は87%! でも、その中身は...
日本のプラスチックゴミの総量は年間824万トン。そのうち87%に当たる717万トンがリサイクルされ、残りは焼却されたり埋め立てられて処理されます。リサイクル率87%というのは、世界でもトップレベルのリサイクル率です(2021年時点)。
しかし、リサイクルされたプラスチックゴミの大半が、燃やされていることを、みなさんは知っていますか?
「え? リサイクルされたら、新しいプラスチック製品に生まれ変わるんじゃないの?」
そんな感想を持った方も多いのではないのでしょうか?
いったいぜんたい、日本のプラスチック・リサイクルはどうなっているのか、一緒に見ていきましょう。
プラスチックのリサイクル方法には、3つの種類があります。
1つ目の方法は「マテリアルリサイクル」。
プラスチックゴミを、粉砕・洗浄して、フレークやペレットといわれる状態にしたものを原料に、新たなプラスチック製品をつくるリサイクル方法です。
マテリアルリサイクルを繰り返すとプラスチックが劣化し、製品の品質は落ちていきます。そのため、何度でも無限に使える方法ではありません。現在、プラスチックリサイクルの24.7%が、この方法です。
2つ目のリサイクル方法は「ケミカルリサイクル」。
これは、プラスチックを加熱したり圧力をかけたりして、分子レベルで分解して再利用する方法です。この方法だと、新品と同レベルの高品質なプラスチック製品をつくることができるほか、石油製品に戻したり、水素や炭素をガスの状態で回収したり、製鉄原料として活用するなどさまざまな形で再利用することができます。
この方法はマテリアルリサイクルに比べてより無駄なく再利用できるものの、設備にお金がかかるなどの理由から、リサイクル全体に占める割合は、わずか4%しかありません。
マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルの2種類のリサイクル方法は、プラスチックゴ
ミを新しいプラスチック製品に生まれ変わらせる方法です。「リサイクル」と聞いたときに、多くの人が想像するのが、この「生まれ変わり」タイプのリサイクル方法ではないでしょうか。
しかし、これらの方法はリサイクル全体の28.7% しかありません。では、残りはどんな方法でリサイクルされているのでしょう?
残りのおよそ7割を占める方法が「サーマルリサイクル」といわれるプラスチックゴミを燃やして生まれる熱を蒸気に変えて発電したり、暖房や温水プールなどの熱源として利用する方法です。つまり、新しい製品にしたり、原料として生まれ変わらせるのではなく、燃やしてしまっているのです。
海外の多くの国では、このようにプラスチックゴミを燃やして熱回収する方法を「リサイクル」とはみなしていません。国際的な基準に照らし合わせた場合、日本のリサイクル率(87%)はかなり低くなるといわれています。
どうでしょう? 「リサイクル率87%!」と聞いたときに思い起こす「環境先進国・日本」のイメージと実態はかけ離れていますよね。
プラスチックを生まれ変わらせる方法のリサイクルの割合を増やしていくことも大切です。でもまずは、「ゴミ」になるプラスチックの使用を減らす努力が必要です。
みなさんはゴミ削減のキーワード「3R」を聞いたことがあるでしょうか。Rから始まる3つの言葉、①リデュース(削減)、②リユース(再利用)、③リサイクル(再生利用)のことを指しますが、大切なのはその順番です。言葉の並び順が、優先順位を表しているんです。リサイクルは最終手段。
まずはリデュースから心がけましょう!
※掲載されている情報は2024年2月現在のものです。
(参考)
・プラスチックリサイクルの基礎知識2023(一般社団法人プラスチック循環利用協会、2023年)
・プラスチック・リサイクル 発展編(一般社団法人 プラスチック循環利用協会)
チャリツモ
これまで遠く感じていた社会問題を、自分ごととしてとらえるきっかけを提供し続けるクリエイター集団。「そうぞうしよう。そうしよう」がキャッチコピー。本書のベースとなっているWEBサイト「チャリツモ」をはじめ、10代の若者が抱える性のモヤモヤにこたえる「セイシル」(運営会社はTENGAヘルスケア)や「日本財団 Instagram」など、WEBメディアを中心にさまざまな媒体の運営に携わっている。