コーヒーは、時間をかけてゆっくり淹(い)れるもの――。そんな常識に、一石を投じる商品が登場した。キーコーヒーの「KEY DOORS+ JET BREW」(以下、ジェットブリュー。希望小売価格602円)だ。
最大の特徴は、とにかく「速い」こと。ドリップコーヒーといえば、お湯を細かく注ぎ、香りを立たせ、待ち時間を楽しむもの。「あえて手間をかける行為に価値がある」と考える人も多い。
スーパーなどで販売している簡易型のドリップバッグでも、できあがるまで2~3分ほどかかる。しかし、である。ジェットブリューを使えば、最短「10秒」で抽出できるのだ。コップにセットし、お湯を注いで、上下に振る。ドリップのように、お湯を細かく落とす必要もなく、数分待つこともない。
「え、特徴はそれだけ? うーん、2~3分くらい待てるよ」といった人もいるだろうが、ドリップバッグ市場の現状を踏まえると、小さな変化をもたらしそうな“香り”が漂うのだ。
インテージSRI+の調査によると、ドリップバッグ市場は2020年からほぼ横ばい。伸びていないということは、裏を返せば、日常の中に定着しているとも言える。出勤前のビジネスパーソンや仕事の合間などに「淹れるのに、失敗はしたくない。そこそこおいしいコーヒーで十分」という人は、確実に存在する。
そんな成熟市場に、なぜキーコーヒーは新商品を投入したのか。理由のひとつに、利用者の「不満」があった。同社が利用者を調査したところ「粉が飛び散る」「お湯があふれる」といった声が集まった。ちょっと地味だが、やっかいな点である。
そこで「紅茶のティーバッグのようにすればいいのでは」という発想が生まれた。ところが、コーヒーではそう簡単にはいかない。最大の壁は、「粉」が沈まないことだった。
コーヒーの粉は軽く、お湯に浮きやすい。浮いてしまえば、粉とお湯が十分に接触せず、味がどうしても薄くなる。こうした問題に対して、キーコーヒーはどのような手を打ったのか。
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成熟市場に「10秒のコーヒー」はササるのか キーコーヒーが4年かけて見つけた“速さ”の価値
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パッケージには、「革命」の文字が大きくあしらわれている。このデザインを決めるまでに、検討した案は100以上にのぼった。会議では「快速」や「特急」といった案も出たが、「快速と急行の違いが分かりにくい。どっちが速いのか、消費者が迷うのではないか」という懸念が上がった。また「特急」は、鉄道のイメージが強すぎるとして、最終的に見送った。
今回の商品は、コーヒー市場に革命が起きたというよりも、「忙しい日の選択肢が1つ増えた」という話である。だが、その「1つ増えた」という変化が、消費の世界にどのような影響を及ぼすのか。
市場を動かすのは、聞こえのいい言葉より、現場で使われる“10秒の改善”なのかもしれない。
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