東京の街に、新たな名建築が誕生する。
10月19日(木)より、住居併設の複合施設「Forestgate Daikanyama(以下、フォレストゲート)」がオープンする。
世界的な建築家・隈研吾氏が、賃貸住宅・シェアオフィス・商業施設の入居するMAIN棟のデザイン設計を手掛けた。
“洞窟”をコンセプトに
フォレストゲートは、代官山駅東口の目の前に位置する。駅から出て緑豊かな遊歩道に入ると、賃貸住宅や商業施設などが入居するMAIN棟と、カフェやイベントスペースを設けるTENOHA棟の2棟が立ち並ぶ。その間を抜けていくと、渋谷駅方面に向かう八幡通りに出ることができる。
隈氏が記者会見で語ったのは、「洞窟」というコンセプトだ。
建物の中にある種の洞窟空間を作って、そこを抜けると広がる別世界を意識しました。
住宅エントランスも、隈氏が手がける。
MAIN棟に入居予定のテナントは、ブルーボトルコーヒーの旗艦店(12月にオープン)や、フレグランスショップのジョーマローンロンドン、パレスホテルが手掛けるパン屋・エトヌンク、グリーンショップの「SOLSO HOME」などがある。
機能性以外の「こだわり」を
同施設では、賃貸住宅57戸のうち、「暮らしを拡げる実験的な取り組み」として隈氏を含む3名のクリエイターによる 「ライフスタイル提案住戸」も3戸設ける。
隈研吾氏は、部屋全体が一枚の布で覆われたワンルームをプロデュース。
同施設の遊歩道などのグリーンデザインを担当するSOLSOの齊藤太一氏が手がけるのは、四季折々の植物や個性的な多肉植物など緑いっぱいの空間だ。
フードエッセイストの平野紗季子氏プロデュースの住戸は、大きなダイニングテーブルが配置されている。広々としたベランダではハーブを摘むことができる。
食のプラットフォームも登場
左から、東急不動産 渋谷開発本部 執行役員本部長・黒川泰宏氏、ライフスタイル提案住戸を手がけた隈研吾氏、齊藤太一氏、平野紗季子氏。
フォレストゲート代官山を手がける東急不動産は、渋谷スクランブルスクエアなどの渋谷駅周辺開発から足を伸ばし、「東急プラザ原宿『ハラカド』(2024年春開業予定)」など、「広域渋谷圏」の開発に取り組んできた。
渋谷を取り囲む個性豊かな街の中で、同社の目に代官山は「食に関する感度の高いエリア(東急不動産 渋谷開発本部 執行役員本部長 黒川泰宏氏)」と映っているという。
「研究所」と名付けられたテストキッチン。
提供:東急不動産
そこで、新たな試みとして同社がスタートさせるのが、食のプロセスエコノミー拠点「ソーシャルキッチン代官山」だ。オフィス以外にテストキッチンや、販売実験できるカフェ&バー・グローサリーを併設し、企業や自治体とシェフをつなぐプラットフォームとして機能するという。
店産店消・解体可能なカフェ
TENOHA棟の外観。屋上農園を設ける。
提供:東急不動産
代官山駅側のTENOHA棟では、アップサイクルなカフェ「CIRTY CAFE」がオープン。
フォレストゲートで発生した食品廃棄物は、横浜のバイオ工場でメタン発酵させて再生エネルギー(電力)と肥料を生み出す。電力はフォレストゲートの運営に、肥料は関東近郊の契約農家、店内の植物工場・屋上菜園で活用されるという。
CIRTY CAFE内の植物工場。
カフェのフードは、契約農家から仕入れたものだけでなく、店内の植物工場や屋上菜園の野菜やハーブも使われる。
まさに、地産地消を超えた、“店産店消”を実現する取り組みだ。
金属のジョイントでつながれた木材は、取り外し可能だ。建物を移設することも考えて設計されている。
ユニークなのは、カフェだけに留まらない。TENOHA棟の建築は、間伐材を使用されている上に、なんと解体可能だという。
他にも、量り売りの専門店・CIRTY BIOSK by Totoyaの出店やロスフラワーの販売など、アップサイクルなショッピングも楽しめる。