ワインに使われる添加物とは、粘土・卵白・チョウザメの浮袋も

ジョージア人のワイン製造者の先祖の名前が刻まれたカップでグラスに注がれるワイン。世界で最初のワインのいくつかは、紀元前6000年頃にこの地域で造られた。ワインの添加物は、数千年にわたるワインの発展を経て一般的になった。(PHOTOGRAPH BY BRIAN FINKE/GETTY IMAGES)

ジョージア人のワイン製造者の先祖の名前が刻まれたカップでグラスに注がれるワイン。世界で最初のワインのいくつかは、紀元前6000年頃にこの地域で造られた。ワインの添加物は、数千年にわたるワインの発展を経て一般的になった。(PHOTOGRAPH BY BRIAN FINKE/GETTY IMAGES)

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 ワイン造りの歴史は、人類が狩猟採集社会から農耕社会への移行期にあった約8000年前までさかのぼる。エジプトに最初のピラミッドが建てられるより3000年、ローマ建国より5000年も前からワインは造られていたのだ。(参考記事:「新石器時代のワイン、世界最古の残留物を発見」

 30年にわたってワインの歴史を研究してきたワイン教育者のウェス・ヘイゲン氏によれば、最も初期のワインは、単にブドウをつぶし、ブドウの皮に付着する環境固有の酵母で発酵させたものだった。こうしたワインは、酢のような風味になるのを避けるため、数週間から数カ月で消費された。

 ワインは最も自然な飲料のひとつであり続けてきたというイメージがある。しかし実際のところ、独創的なワイン製造者たちはかなり早い時期から、品質と均一性を向上させる方法を見つけ出そうとしていたと、米ミシガン州立大学エクステンション(拡張部)のブドウ栽培専門家であるマイケル・ラインケ氏は言う。

 ワイン製造者は、古代ローマの建国(紀元前753年)の頃から、亜硫酸塩、オリーブオイル、海水や様々な樹脂を加え、ワインを保存しやすくしていたとヘイゲン氏は説明する。(参考記事:「ブドウを海に沈める、イタリアで古代のワインづくりを復興」

 ワインに添加物が広く使用されるようになったのは、1970年代~80年代にかけてのことだ。「より大量のワインをより早く、より安く作れるように、多くの処理をし始めたのです」と、あまり添加物を加えないオーガニックやバイオダイナミック農法のワインの製造者や愛好家の団体である「RAW WINE」の創設者イザベル・レジェロン氏は言う。

 米食品医薬品局(FDA)は現在、ワイン造りに数十種類の添加物を使用することを許可している。米国のワイン業界団体「ワインアメリカ」のマイケル・カイザー副会長は、添加物の目的は「製品をごまかすことではありません。ワインをよりおいしくするためです」と説明する。

 以下では、現在のワインに含まれている可能性のある成分と、製造者がそれらを使用する理由を紹介する。(参考記事:「エジプト最古のワインは生薬入り」

保存のため

 ワインを何年も置いておいても安全に飲めるようにするには、ワインを腐らせたり酢に変えたりする細菌の繁殖を防がなければならない。

 硫黄を含む物質(亜硫酸水素塩、二酸化硫黄、亜硫酸塩、硫酸塩など)は特に効果的な保存料だ。少量の二酸化硫黄は発酵の産物として自然に生じるが、ほとんどのワイン製造者は、数カ月から数年腐らないワインを造るために、さらに添加する必要があるとラインケ氏は説明する。

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