コーヒー豆生産に伴う環境負荷をご存知だろうか。
コーヒーは世界的に人気のドリンクだが、1杯のコーヒーには140Lの水が必要だとされ、1杯のコーヒーからは二酸化炭素が29kg排出されると言われている。気候変動の影響により、コーヒー豆の生産地が今後半減する可能性があり、別の手段でコーヒーを開発する試みが世界各地で進んでいるのだ。
その最新企業の1つが、シンガポールのPreferだ。2022年に設立されたPreferは、おから、ビール粕(BSG)、廃棄パンを使用してコーヒー豆を使わないコーヒーを開発した。
Preferのコーヒーは、シンガポール市内の複数のカフェで提供されている。今回、Preferのコーヒーを試すことができたのでその感想を伝える。
食品副産物を活用した地産地消のコーヒー
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共同創業者のDing Jie Tan氏(左)とJake Berber氏(右) 出典:Prefer
Green queenの報道によると、Preferは、ベーカリー会社Gardeniaから廃棄パンを、豆乳メーカーMr Beanからおからを、The 1925 Brewing Co.とBrewerksからビール粕を調達している。原料はすべて現地の企業から調達しており、地産地消のコーヒー事業を実現している。
食品グレードの微生物を使用して原料を発酵させ、発酵混合物を焙煎し、最後に粉末に粉砕してパック詰めにする。独自技術により、3つの原料から、コーヒーに含まれる主要な揮発性香気成分を生成しているという。
では、食品副産物を使用して作られたコーヒーはどんな味がするのか。
Preferのコーヒーを実食
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チャイムス Foovo(佐藤)撮影
訪れたのは、ヴィクトリア通りにある修道院を舞台とした複合施設チャイムス(CHIJMES)。この中に、Doughというカフェがある。Preferのコーヒーを提供しているカフェの1つだ。
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Foovo(佐藤)撮影
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Dough 店内は満席だったのでテラス席に座る Foovo(佐藤)撮影
DoughではPreferを使用した3メニューが提供されている。カフェインフリー、カフェイン増量タイプを選べる。The Straits Timesによると、紅茶由来のカフェインを使用しているようだ。
カフェインフリーのPrefer Oat Whiteを注文した。金額は6.5シンガポールドル(約730円)で、一般のコーヒー価格と変わらない。
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Doughのメニュー Preferのメニューがわかりやすく工夫されている
Preferだけのブラックコーヒーを試してから、ミルクを入れて味わってみたかったが、Doughではオーツミルクやソーダなどとブレンドしたメニューだけのようだった。店頭にOatlyのオーツミルクが置いてあったので、Oatlyを使用しているかもしれない。
こちらがカフェインフリーのPrefer Oat White▼
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Prefer Oat White Foovo(佐藤)撮影
見た目は一般のラテと変わりはない。一口飲むと、瞬時に違いがわかる。これまでに飲んだオーツミルクベースのカフェラテにはなかった、香ばしい風味が存分にあふれていた。廃棄パンやビール粕から生じている風味のような気がする。
この風味の好き嫌いは人によりわかれるかもしれないが、カフェインレスを補う役割を果たしていると思った。日本でカフェインレスコーヒーを飲んだ時、もう1度飲みたいと思ったことはなかったが、Prefer Oat Whiteは美味しかった。
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Foovo(佐藤)撮影
The Straits Timesによると、シンガポール市内のカフェに導入されたのは2023年12月のようだ。すでに市内16箇所(2024年4月16日時点)に導入されているのは、この味わいが評価されているように思える。
イートインだけでなく、ボトル製品がMarina Bay Financial Center、Metropolis、Changi Bizparkに導入されている。
シンガポールの次はフィリピンへ
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出典:Prefer
Green queenの報道によると、今年第2四半期にはスーパーに導入される見込みだという。Preferはシンガポールの次の進出先として、フィリピンを目指している。アジアで高まるコーヒー需要を受けて、2025年まではアジアに焦点を当てているようだ。
食品製造で生じる副産物をアップサイクルしたコーヒー生産は、製造期間を短縮し、食品メーカーに新たな事業、環境問題対応策を提供するものとして注目を集めていきそうだ。
参考記事
Local start-up Prefer launches bean-free coffee made from bread, spent barley and soya bean pulp
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アイキャッチ画像の出典:Prefer